1,2話

「おはようございます、ここの方ですか?」
 段ボールに乗ったおっぱいが話しかけてきた。
 ……正確にはGカップはあろうかと思う程。大きなたわわを段ボールに乗せて荷物を運んでいる女性だ、余りの存在感につい目がそっちにいってしまった。
 見上げて彼女の顔を拝見すると、整った顔立ちをした女性が笑顔でこっちを見ていた。

「……?」
 彼女は首を傾げて立ち尽くしている。あ、そういや返事をしてなかった。
「おはようございます……お隣に引っ越してきたんですかね?」
 横の部屋を指さしながら質問する。
「はい、そうなんです。今日から宜しくお願いします」
 彼女は頭だけ下げて軽く会釈をした後、荷物運びを再開した。
後ろ姿の彼女を見つめると、ジーンズ越しに形がはっきりわかる臀部が歩く度にぷりぷりと揺れていて目が離せない。

 これは……エロい……。
 ドアから身を乗り出して覗き込もうとすると、背後から何かがぶつかり体にトン、と衝撃が走る。
 何かと思い後ろを振り返ると、女の子が鼻を手で抑え、目には涙が溜まっている。
「あ、ごめん。大丈夫?」
 声を掛けると少女はどこを見てるんだと言わんばかりに睨みつけてきた。
 えー、何この子。怖い。
「結花、どうしたの?」
 先程の女性が手ぶらで戻ってきて少女に話しかける。
「道を塞がれて事故を起こしました」
 少女は俺を指さすと、悪意たらたらの口調で状況を伝える。
 くそ、ぶつかったのは事実なのでいちいち反論しにくい……。
 しかし、話を聞いた女性は慣れた態度で俺に話しかけた。

「あらあら、すいません。家の娘がご迷惑を」
 俺は『娘』という単語に驚いた。
 なぜなら目の前にいる女性はどう見ても20台後半にしか見えない、娘がいるとはとてもとても……。
 改めて二人を見比べてみると、なるほど確かに、顔のパーツはよく似ている。
「……何?」
 じろじろ見ていると娘が|怪訝《けげん》な表情を浮かべてこっちを見ている。
 しまった、流石に見すぎたか。
「えっと、娘さんと聞いて驚いて……てっきり姉妹かと思ったので」
 変に言い訳すると娘さんが噛みついて来そうな気がしたので思った事を正直に言うと、二人ともパっと嬉しそうな顔をした。
 姉妹と言われて喜ぶその表情からは、二人の絆が見て取れる。
 きっと普段も笑顔の絶えない家庭なんだろう。

「いや、本当こんな若々しい奥さんと娘さんがいて旦那さんが羨ましいですよ」
 社交辞令としてそのまま相槌を挟むと、空気がピタっと止まった気がした。
 そういえば引っ越し業者の制服を着込んだ男が数人いるが、彼女の伴侶と思わしき男性はこの場にいない。
「父さんはいない、去年死んじゃった」
 母親のいたたまれない空気を感じたのか、娘が口を開いた。
「あ……それは申し訳ない」
 思わず失言をしてしまった事を謝罪すると母親は「いえ」と首を横に振った。

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