4.50話

 ――まるで、時が止まったようだった。
 火照った躰を持て余しながら、寝室の扉を抜けると我が目を疑う光景が広がった。
 そこには、生まれたままの姿を晒している娘がいたのだ。

 想像もしていなかった状況に、惚けた頭が急速に冷めていく。一体何が起こっているのか理解できないまま、私は結花の痴態を見て立ち尽くしていた。
 ベッドの上で裸体を晒している娘は、大股を開いて秘所にディルドを突き刺していた。身の丈に合わない張型を両手で掴み、恍惚とした表情で抽挿を繰り返す。
 
「ん、んんんんん……気持ちいいっ、オモチャ、気持ちいいよぉ……、ずっとカタくてぇ、手が止められないよぉ……」

 幼い声を悩ませながら、艶を帯びた表情をしている結花はまるで成熟した女性のように、全身から色香を振り撒いているかのようだった。

 つい先程の、子供らしい笑顔をして家を出る娘が脳裏に浮かんで、快楽に歪む娘とのギャップに全身から血の気が引いていく感じがした。どんどんと視界が端から暗くなっていき、ぐらぐらと揺れる景色に立っている事が出来なくなってきた。

「う゛っ、~~~~!」
「うわ、大丈夫ですか?」

 突然、腹部から迫り上がるような感覚がして躰が声を上げる。すっかり脚の感覚がなくなっていた私は、押し寄せる吐き気に耐えかねてしゃがみ込むように倒れてしまった。

「お……おぇっ、げほっ、けほっ!」

 体中を襲う気持ち悪さを吐き出すように、体が勝手に空咳を繰り返す。
 咳を繰り返す度、口から。鼻から。瞳から。顔中から水分が溢れ出し、ストレスで頭がおかしくなってしまいそうだった。
 そんな私の姿を見て、米田さんは落ち着いた態度で私の背中をさすって、介抱をしていた。

「うわ、顔ぐしゃぐしゃになってますね。はい、タオルです」

 米田さんがそう言うと、眼前にタオルが現れる。
 返事をする余裕もない私は、無言のまま、手渡されたタオルを受け取った。

 顔を拭き、少し落ち着いてきた頭を上げてもう一度確認する。もしかしたら何かの見間違いかも知れない、祈るようにそう思ってから確認してみるが、ベットの上にはやはり、娘の姿があった。

 何時の間に気付いたのか顔は私の方に向いており、目を細くさせた表情は、相変わらず愉悦を享受している様子だった。

「あ、お母さんだぁ。まってね……もうすぐで、い、イクっ、からぁっ……」

 頬を紅潮させながら、声を押し殺すように自慰に浸る結花は、皮肉にも引っ越してきてから一番幸せそうな笑顔を見せていた。

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