さっき確認した膣口に狙いを定め。慎太郎は鉾先をあてがった。そしてゆっくり、ゆっくりと鉾先をぽぷらに沈めていく。
ずぶ……ずぶぶぶぶぶぶぶ……。
「んあ、あああああ……っ!」
ぽぷらの身体に力が入り、一際大きな嬌声を上げる。すると膣圧が一気に増して、慎太郎の怒張を圧着するかのように膣壁が押し迫ってくる。これでは上手く奥に進むことが出来ない。
「せ、先生。もっと力を抜かないと……」
「ご、ごめん。で、でも無理ぃ……痛くてきつくて……こ、こんなの我慢できない……っ!」
そう言われても我慢できないのは慎太郎も同じなのだ。なんとか彼女の強張りを抑えないと消化不良で終わってしまう。そう思った彼はタンクトップの隙間からはみ出る、ほどよく膨らんだたわわに目を付けた。
「んっ! ひゃああぁぁぁ……し、しんちゃん。どこ触ってるの!」
「どこって、胸ですよ。そう言えばここの勉強はしてなかったなって」
「そ、そうだけど……今じゃなくてもいいでしょうっ。わたしそれどころじゃなくて――」
話しているぽぷらを無視して、タンクトップごしに膨らんだ突起を指でつねる。
「あああああ……!」
すると、ぽぷらは身体を戦慄かせて声を荒げた。
「乳首ってこんなに固くなるんですね。勉強になります」
言いながら、慎太郎は乳頭を責める手を休めない。
「んあ、はああぁぁっ、ひ、ひぃんっ!」
乳首を責められる刺激はぽぷらにとって相当に強いもののようで、慎太郎の軽口にも返事をする余裕がないようだった。少しの間乳首を責め続けていると、怒張を押し込める膣圧が少し緩むのを感じた。
その隙に慎太郎は亀頭部まで入っていた怒張で膣肉を押し広げる。
「んあ、ああああっ!」
きついながらもなんとか入り込んでいく剛直にぽぷらは悲鳴にも似た声を発した。
慎太郎は彼女の顔を見る。剛直を押し進めていくうちに、彼女の顔が苦痛に染まれば、器用に乳頭を扱いて痛みを緩和させていた。そうして自分の逸物をすべて、彼女の膣内に収めていく。
「先生、とても可愛いですよ。まさしく女の子の顔をしてます」
「や、んあっ、やあぁ……は、恥ずかしいよしんちゃん……っ、ああああっ!」
怒張が根元まで入り込み、二人の鼠径部が密着する。
奥まで入り込んでしまえば、痛みも多少はマシになってきたようでぽぷらは呼吸を落ち着かせていた。
「ちゃ、ちゃんと全部入った……?」
「はい、根元まですっぽり。お互いの初体験卒業、おめでとうございます、ですね」
「ぷっ、ふふふ……何それ」
慎太郎の言葉が面白かったようで、ぽぷらは噴き出すように笑った。その様子が慎太郎から見れば可愛くて可愛くて……今まで見たことのない、女の子の表情というものを初めて見た気がした。
「……そろそろ動いても大丈夫ですか?」
「うん、いいよ……しんちゃんの好きなように動いてみて」
ぽぷらは頷き、慎太郎に身体を預けるように手を放り出した。
慎太郎は出来るだけ彼女に痛みを与えないよう、慎重に腰を引き抜く。
「んっ……くぁ……ああ……」
ひきぬくたびに、ぽぷらは痛みとは違う艶のかかった吐息を漏らす。
「気持ち良くなってきましたか?」
慎太郎の問いにぽぷらは頷く。
「なんかね、しんちゃんがうごくたびにアソコがジワッて熱くなってる感じがして……ふわふわとしてきてるの」
「擬音だらけで語彙力のない感想ですね」
「だ、ってぇ……それどころじゃない、もの……」
浅く抽挿をすると動きにあわせてぽぷらの喘ぎ声が聞こえる。顔からは苦痛の色が消え、快楽を満喫しているのがわかるように顔の表情を緩ませる。
「あっ、はぁあっ、ん、んんっ! ね、ねぇ、しんちゃん、もっ、気持ちいいっ?」
「ええ、最高に気持ちいいですよ。先生は膣内もとんでもないですね」
「ほ、本当……? や、やったぁ、あんっ」
慎太郎は素直に思ったことを述べた。彼女の笑顔を見れば、彼女の肉体を感じれば、彼女とひとつになれば、自身の劣等感や自己嫌悪、上手く描けなかったことなんて本当に些細なことのように感じてしまい、変に意固地になるのが違和感のあることに感じてしまったのだ。
(先生はいつもありのまま。思ったことを思った通りに行動する。だから心配になれば仕事を置いて一緒に悩んでくれるし、痛いなら痛いとはっきり表現をする。それが先生の魅力で、読者はそんな人が描いているキャラクターを求めていたんだ)
自分の中で納得がいったように、慎太郎は大きく腰を突き出した。|撹拌《ピストン》された膣肉は今ではすっかりほぐれており、抵抗することなく慎太郎の怒張を受け入れる。
「はあ、はあああ……、しんちゃん、しんちゃんっ!」
ぽぷらの声が高くなり、寂しい子供のように両手を広げていた。慎太郎は彼女に抱き着くと、彼女も広げた腕を回してきつく抱擁をしてくる。
「しんちゃん、わたし、浮いちゃう、身体がフワッってして、おかしくなっちゃいそう」
「もう少し我慢してください……! お、俺ももうすぐでイきそうなんですっ!」
抽挿は見る間に激しくなっていき、肌を打ち付ける音が部屋に鳴り響く。
「うう……、い、イク……っ! 先生、俺、イきますよっ!」
「あうう、あうううう……」
ビュルルッ! ビュルルルルルルルルルルッ!!
「あああああああああああああああっ!」
怒張を最奥まで押し込め、樹液をありったけぽぷらの膣内に放出した。それと同時にぽぷらを身体を弓のように反らし、ビクビクと痙攣を起こしている。
「先生……」
「んっ……んちゅ、ちゅぱ、ちゅ……」
慎太郎は無意識に顔を近付け、ぽぷらの唇を奪っていた。
ぽぷら自身も嫌な顔をせずにキスを受け入れ、慎太郎の舌を抱きしめるように舐る。
それから暫く、二人はギュっと、抱きしめ合っていた。
※
「どうですか先生」
アシスタントである慎太郎と初めて身体を重ねてから三日。彼が自信満々といった感じで原稿を差し出してきた。
「これってもしかしてこの間の原稿?」
「ええ。あれから俺なりに改善点を見つけて描き直してみたんです。ですから先生に感想をいただきたいなと」
「へぇ~いいねぇ! どれどれ、じゃあ早速――」
ぽぷらは慎太郎の漫画が大好きだった。彼の漫画には自分にはない熱意と真摯さがこれ以上ないほどに詰まっている。わたしはそれが羨ましくて羨ましくて、嫉妬して、憧れていた。
「――うん、凄くいい。特にこのヒロイン。主人公を心配するあまり足をひっぱっちゃうことがあるけど、ここぞというところでは背中を押してくれる。健気な感じが超かわいいよっ。これ掲載いけるんじゃないかな」
「本当ですかっ⁉」
子犬のように目を輝かせて慎太郎が喜ぶ。それを見てこちらまで嬉しくなってしまいそうな眩しい笑顔だった。
「本当だよ。早速担当さんに見せにいってきなよ。きっといい反応してくれるよ」
「そうですか? それじゃあ申し訳ないですけど、早引けさせてもらいますね」
原稿を慎太郎に返すと彼はせっせと準備をして玄関まで移動した。
「あ、先生」
「なーに?」
「……ありがとうございます。先生のおかげで俺、生まれ変わったみたいです」
「なにそれー、まるで別れの挨拶みたいじゃない」
「えっ、いやいやっ⁉ まだまだ学ばせてもらうつもりなんですから、俺は離れませんよ」
ぽぷらの軽口に必死に反論して、「じゃあ、いってきます」と慎太郎は意気揚々と仕事場を後にした。
「いってきますって……まるで旦那さんみたいだねぇ」
彼の台詞にニヨニヨと笑みを浮かべたぽぷらは彼を知った日を思い出す。
慎太郎がアシスタントに来るよりももっと前、打ち合わせで編集者に会いに行った時、彼の原稿を初めて見た。
圧巻だった。粗削りでただ描きたいものを描いているだけの原稿、それなのに熱量から目が離せない。ああ、この人は本当に漫画が好きなんだな。とすぐに気づかされるような内容だった。
自分も漫画が大好きだ。読むだけに飽き足らず、自分の見たい物語を描き始めて、今ではそれが仕事になっている。だからこそ、自分は漫画を愛していると思っていた。
でも、上には上がいた。ここまでの熱量、わたしは到底描き表すことは出来ない。今まで楽しくやってきただけのわたしに初めての敗北感が胸を襲った。
それからはもう必死になって彼を追いかけた。担当に相談して、彼が持ち込みをしたらすぐさま原稿を見せてもらっていた。そして思い悩んでいるということも聞かされた。
(だから、それとなくアシスタントに来てもらうよう掛け合ったのよね)
それは親切ではなくて憤りだった。
自分より力を持っている作者が悩んでいるだって? ふざけるな、それじゃあ敗北感を持ち続けているこっちはどうなるんだ。力のある人間が思い悩むなんて思い上がりだ。その性根を叩きなおしてやる。なんて……躍起になったのを思い出してぽぷらは気恥しくなった。
(今にして思えば……作者としてではなく、いちファンとしての憤りだったのかも知れないな)
ここで彼が折れてしまったら、もう作品が見れなくなる。それはとても、とてもとても悲しいことだと思った。そして、こんなに自分の心を束縛しているのにいなくなるなんて無責任な行為に腹立たしくなったのだ。
(たはは、考えれば考えるほど、厄介なファンだね)
でも、彼は立ち直った。今では技術も身に着けて、自信に溢れる、とても格好いい作者になった。
(しんちゃん、大好きだよ)
尊敬、嫉妬、そして情愛。すべてが入り交じった告白を心の中で反芻する。彼女はずっと、初めて慎太郎の原稿を見た時から彼の虜なのだ。
いつまでそうしていたのだろうか、ぽぷらのスマホが鳴り響く。担当からの電話だった。
「はい?」
――あ、ぽぷらちゃん? さっきね、あなたのお気に入りが原稿を持ち込んできたんだけど、なんとね――。
「――そうですかっ!」
担当の言葉にぽぷらは心の底から笑顔になった。仕事場を出ていった慎太郎の顔を思い浮かべる。
彼が戻ってきたら、バカみたいに大きなケーキでお祝いをしてあげよう。そう思ったぽぷらは満面の笑顔のままで電話を切った。
<END>
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