なかよし家族
▼目次

1,謎の奇病に掛かってしまった(6)

「ぷっ、あははっ。藤宮さんって、面白い方ですね」
「……なんですか、嫌味ですか? 正体不明の病気で落ち込んでいるっていうのに……」
「あら、ごめんなさい。……まぁ確かに、大体の人なら大変なご病気になるんでしょうね。でも龍之助さんならそんなに困った事にもならないでしょう?」
「ど、どういう事ですか?」

 要点を得ない会話に、龍之助は首を傾げる。

「だって――あなたには美人なお姉さんやお母様がいるじゃありませんか」
「……え?」
「しかも、私の見立てでは、彼女達は藤宮さんの事がとても大事な様子ですし……それこそ身体を張って協力してくれると思いますよ」

 茜に言われて、龍之助は亜花梨と優菜。そしてここには来ていない、もう一人の姉を頭の中に想像した。
 姉と母は確かに美人だ。ご近所からも評判で、美人姉妹ともっぱらの噂なのだから。しかも母親の見た目と来たら、何かの悪魔と取引でもしてきたのかと思うほど若々しく、姉と並んで歩くと姉妹と間違えられる事も珍しくはない。

 そんな彼女達は、末っ子である龍之助にはとことん甘い。溺愛といっても過言ではない。
 特に母親に関しては、龍之助は先立ってしまった夫を思わせる忘れ形見だ。その溺愛っぷりといったら見知らぬ他人から見たら、事案として通報されてしまうレベルだと思う。
 だから、お願いしたら本当に性処理を手伝ってくれるかもしれない。しかし、龍之助は父親との約束があったのだ。

 その約束とは――『家族を大事にすること』
 女子ばかり生まれた中で、やっと生まれた男子だった龍之助は、男らしい父親の寵愛を受けていた。(勿論、姉達も一杯可愛がられていたが)
 龍之助という名前も、龍のように立派な男になれるようにと父親がつけた名前だ。
 残念ながら、身長は160センチで止まり、男どころか女の子と間違えられるぐらいに童顔という、まさに名前負けと言える容姿に育ってしまったけど……。

 それでも、父であり、憧れの男性象でもあった父親の教えは絶対だ。
 いくら病気だからといって家族に手を掛ける何て事……父親との約束を反故にしてしまうようなものだと龍之助は思った。

「それは……駄目ですよ。家族をそんな目で見るなんて、裏切り行為だ」
「あら……フェラ抜きされてる時はあんなにアヘアヘ言っていたのに、意外に堅物なんですね」
「そ、それとこれとは関係ないでしょう!」
「はぁそうですか……ま、ご家族の問題なので、これ以上は言いませんが~……どんなに気張っても無駄だと思いますけどね」

 意味深な含みを見せながら、茜はそう言った。

「ただ射精すればいいだけでしょう? だったらオナニーでもして、僕が気を付けたらいいだけだ。気にする事なんて何もないですよ」
「う~~ん……鈍感之助さんですねぇ」
「何ですかそれ……というかさっきから人の名前で遊ぶのやめてください」
「これは失礼之助」

 僕は馬鹿にされているんだろうか。

「まぁ、その話は置いといて、次いきましょうか」
「え……次ってなんですか?」
「そりゃ、三本目ですよ。ほら、座ってください。それとも立ってやるほうが良いですか?」

 そう言いながら、茜は龍之助に近寄ってきた。

「え? さっきので終わりじゃないんですか?」
「森宮さんはかなり溜め込んだ状態で通院してきたので、後5回は抜いておかないと安心出来ませんね」
「5……5回!?」

 さっきの気持ち良さを、後5回も経験しないといけないってこと!? そ、そんなの……死んでしまうんじゃ。

「あ、勿論射精出来れば問題はないので、オナニーでも大丈夫ですけど……5回もイけますか?」
「うっ……」

茜の提案に、一瞬悩んだ龍之助だったが。今日会ったばかりの人間に見られながらオナニーを5回もするなんて、考えるだけで性欲が衰えていくのを感じる。
それに……さっきのフェラが忘れられない……。
あんな気持ちのいい事をしてくれる女性が目の前にいるのに、自分で処理するなんて、酷く勿体ないという気持ちになってしまう。

(まぁ、この人は家族じゃないから……約束を破る内には入らないし…………)

「どうしますか~?」
「……お願いします」

 龍之助は深く頭を下げてお願いした。

「素直でよろしい。森宮さんって、見た目だけじゃなくて性格も可愛いですね~。庇護欲をそそるというか」
「男的にはあまり嬉しくないです、それ……」
「これは失礼之助。じゃあほら……オチンチンだして……?」
「……はい」

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