7,エピローグ

「あら、藤宮さん。一家総出でどこいくんですか?」

 家族全員で外を歩いていると、声を掛けられた。
 振り向いて確認してみれば、近所に住んでいる気さくなおばさんがそこに立っていた。

「こんにちは。今から買い物に行くんです」
「へぇ~、じゃあ子供たちはお手伝いかい?」
「そんな感じっす」

 亜花梨が元気よく答えると、おばさんは目を見開き、声を弾ませる。

「あらあら~いい子たちで羨ましいわぁ。私のところの息子なんて買い物を手伝うどころか、逆に頼んでくるんですよ。ついでだからいいだろって、嫌になっちゃうわ~本当」

 頬に手を当てながら、おばさんは困ったような動きをした。

「藤宮さんところの子どもたちを見ならって欲しいわ。本当」
「いえいえ、そんな。私たちもただ、仲がいいだけなので……」
「あらそうなの~? じゃあ何か子どもと仲良くなる秘訣とか教えてよ~、私も息子に試してみるからっ」
「え~……そうですねぇ。特別なことは何もしてないんですけど……強いて言えば」
「強いて言えば?」
「いっぱい仲良しすることですかね……?」
「え~、仲良くするのに仲良くするってなんかおかしくない?」
「確かに、ちょっとおかしいかもしれないですね」

 そう言って、優菜はクスリと笑った。

「あら、な~に~その笑顔、いったいどうしたの――」
「あひゃっ!」
「あら、龍之助君。どうしたの?」
「あ……いえ、な、なんでもないですぅうう!」
「???」

 おばさんが訝しい表情を浮かべながら龍之助を見た。するとすぐ真横にいた亜花梨が口を開く。

「あぁ、おばさん気にしないで。ちょっとタツの背中に虫がいたから、取ってあげただけ」
「あらそうなの? 虫触れるなんて亜花梨ちゃん凄いわねぇ」
「そうだね~、あーしも最初はどうしたらいいかわかんなかったけど。今では慣れたものよ」
「あらそうなの。あ、ごめんなさいね足止めしちゃって、私も帰らないと、それじゃあまたね藤宮さん」
「はい、それではまた」

 おばさんが振り返り様に会釈をした、それぞれ相槌を返すとおばさんはそのまま帰っていった。

「――亜花梨姉ちゃん、外では駄目だよ……」

 龍之助が亜花梨の手に視線を移す。彼女の手は龍之助の臀部に伸びていた。
 さっきの会話中、何を思いついたのかいきなり揉みしだかれ、思わず声を上げてしまったのだ。

「大丈夫だって、バレてなかったし。たまにはこういうのもドキドキしていいじゃん」
「ドキドキって、バレたら大事だよ」
「うるさい奴だなぁ、こっちはすっかり元気にしてる癖に」

 そういって亜花梨の手は後ろから前にやってくる。
 慣れた手つきで龍之助の下腹部に触れれば、そこには充血した逸物が膨らんでいた。

「人前で触られてワクワクしちゃったんだろ、可愛い奴め」
「ん……ちょ、亜花梨姉ちゃん……」

 外で堂々と股間を弄る姉に驚き、辺りを見回す。
 幸い見える範囲には人はおらず、更には優菜と静江が阿吽の呼吸で壁を作っていた。

「大丈夫だって、心配性だなー、タツは」
「……もう」
「んで、この膨らんだのどうする? 抜いてやろうか?」
「……」

 龍之助は言葉に出さず、頷いてみせた。
 病気の時とは違い、今ではすっかり立場が逆転してしまって搾り取られる側になりつつある。今だって主導権は亜花梨に握られっぱなしだ。
 だけど、これはこれで悪くはない。可愛いと言われるのはまだ少し腹に立つけど。

「可愛い反応する奴だな~タツは」
「……」

 それでも、前よりもずっと仲良くなったこの歪な家族が、好きだ。これからもずっと、彼女たちと共にいたい。

「あの、亜花梨……するなら私も……」
「じゃあお母さんも~、なら買い物は止めて一度家に帰りましょうか」
「おっけー。ほれタツ」

 亜花梨が龍之助に手を伸ばす。

「これぐらいなら見られても問題ないだろ?」
「そうだね……じゃあ」

 亜花梨の手を取ると、指の隙間に指を通してきた。俗にいう恋人繋ぎという奴だ。

「いひひ、これからもっと凄いことするのに、なんだか照れるな」
「あ、いいな。私も手繋ぐ……」

 静江が横に並び、亜花梨と同じように手を握ってきた。

「あら、じゃあ私も」
「手が足りないよ」
「むぅ、残念だわ……」
「まぁまぁ、帰ったら一回目はママに譲るからさ」
「本当? それならいいわ。早く帰りましょ」

 周りに聞かれたら訝しがられそうな会話を繰り広げながら笑顔を見せる家族を見て、龍之助は笑顔になった。
 そして、これから起こる出来事に備えて英気を養うため、栄養ドリンクだけは買ってもらおうと思ったのだった。

<END>

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