3.21話

 こんな事、夫は一度も求めて来なかった。
 視界に映るあの人以外の男性器を直視しないように、目を閉じて彼の顔を思い出す――

 あの人はとても優しく、いつでも私の事を考えてくれていた。
 行為を誘われた時、私の体調が悪ければ我慢してくれたし、こういう風に、無理に奉仕を強いるような事なんて一度もしなかった……。
 夫と一緒に過ごしていた日々を思い出すと、涙腺が緩んで思わず涙が滲みそうになった。どうしてあんなに早く死んでしまったのだろう。こんな目に合うのなら……私も、一緒に連れて行って欲しかった。
 でも……。そう思った私の頭に、結花の笑顔が浮かぶ。
 私には娘がいる。あの人を感じる唯一の宝物。あの娘だけを残して、私一人がいなくなるなんて事は出来ない。
 つい折れそうになった心をぎりぎりで保ちながら、私は奉仕を続けていると、

「なーんか別の事考えていません?」
「え」
 米田さんがそう言うと――胸の先端から電気が走った。

「あ゛っ!」
 急にやって来た感覚に思わず声を張り上げてしまった。何事かと思い、自分の胸を見てみると、米田さんの指が乳首を摘むように持っていた。
 その姿を確認したのも束の間。その指が万力のように、ギュっと閉じられた。

「んひぃっ! や、ダメ……」
「はは、本当に胸が弱いんですね」

 乳首が潰れてしまうのではないかと思う程、強く力を入れてから、米田さんは私の胸を乱暴に愛撫していた。
 グニグニと乳房を潰される感触は、快楽など微塵も感じず、ただ痛みを与えるだけの暴力のようなものだった。しかし。
 間違いなく痛いはずなのに、抓られ、引っ張られる度に私は言いようのない感覚に躰を支配される。

 その感覚は非常に強く、とても姿勢を保っていられない私は米田さんに縋り付くように体を預けてしまっていた。昨日と同じく、味わった事のない感覚を覚えた私は昨日の痴態がフラッシュバックしてしまう。
 怖くなった私は止めてもらえるように懇願するが、米田さんの愛撫は止まる気配がなかった。

「やっ、駄目なの、やめっ、てっ」
「またまた、こんなに感じていて駄目って事はないでしょう」
 そう言いながら、一向に止まらない彼の指は、止まるどころかどんどん勢いを増していく。
「うっ、うっ、来ちゃう……また、イっちゃ、ううぅぅぅ!」
 私は迫りくる刺激を止める事が出来ないまま、体内が爆発したような感覚を覚え、折れ曲がる程に躰を反らせてしまう。
 与えられる快楽にずっと耐えていた躰には開放感が訪れ、視界の先はチカチカと火花が散ったようで一面が真っ白になった。

「だーかーらー、駄目じゃないですか一人で勝手にイったら。昨日から言っているのに……本当にだらしのない胸だなぁ」
「あっ……ご、ごめんな……さい」
 上手く頭が回らない状態で、乳首に触れられる感覚で強制的に覚醒させられた私は、彼の責めるような言葉で反射的に謝ってしまった。
 
 米田さんの方を見てみると、射精したくて仕様がなさそうにしている逸物を、ビクビクと震わせながら、何かを考えているようだった。
 私の胸をジッと見つめている彼は、何かに納得したように頷くと口を開いた。

「……ちょっと。上脱いでもらえますか?」

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