4.28話

 その表情は、警戒心というよりは羞恥心……みっともない事を知られてしまった、といった感じだった。
 緊張で戦慄く彼女を見て、パニックになられたら困ると思った俺は、結花ちゃんの心を解す為に出来るだけ優しく声をかけてあげた。

「心配しないで。怒ってるとかじゃないから」
「え?」と、狼狽している彼女が呟く。
「触ってみてどうだった? 気持ち良かったんじゃないかな」
 彼女は押し黙っていたが、返事をずっと待っていると観念したのか、やがて首を縦に振った。

 自身で触れて愉悦を感じていたのは、手に付いていた愛液で想像がついた。
 あれだけ湿っていたのだ、俺がイタズラして濡れた分は、美穂さんと話している時間で少なからず乾いているはず、であれば自分で慰め、そして悦んでいたとしか考えられない。

「そうだよね、だってあんなにシーツ汚してたもんね」
 頷いた彼女に、羞恥心を煽るように言うと、彼女の耳は水に赤い絵の具を落とみたいに瞬く間に変色していく。しかしこれは狙ったものだ。

「でも安心してね、それは結花ちゃんが正常だって事だからね」
「正常……?」
 彼女は俺の言葉を、反芻するように繰り返した。

「うん、女の子は股間を弄ると気持ちよくなるように出来てるんだよ。結花ちゃんは一人でそれに気付いて気持ちよくなれたんだよね、偉い偉い。」

 そう言うと、彼女は俯いたまま黙り込んだ。
 赤面したままの表情には変化がないように見えたが、その仕草は少しずつ落ち着きつつあり、なぜか褒められてしまい、どう反応したらいいのかわからないといった具合だった。

 けなしてから褒める。
 アメリカの心理学者二人がとある実験をした。女子学生に対して様々な言葉を組み合わせて相手を褒めた際、どの組み合わせが一番印象に残ったかという実験だ。
 その結果、女子学生はけなされてから褒められると一番嬉しく感じたという結果が残った。欠点を指摘されて無防備になった心には、猜疑心なく褒め言葉が響くのだとか。

 自慰行為に負い目を感じてる彼女には効果があると思って試してみたが――落ち着いた所を見ると中々効果があったようだ。

 彼女は褒められて、なんとなく悪い事ではないのかと思っているはずだ、ここからが本番だと思った。
 緊張のせいか、喉が渇いて上手く声が出せない。口の中に感じる、僅かな水分を飲み込み、口を開いた。

「――男の人もね、触ると気持ちよくなるんだよ。結花ちゃんと同じだよ」
 俺の言葉に結花ちゃんが顔を上げる。
「本当ですか」と、問いかける彼女の表情は少しだけど明るくなっていた。

「本当だよ――ほら」
 そういって彼女の眼前に股間を見せつけた。
 逸物は既に充血しており、ズボンを押しのけるように膨らんでいた。
 それを見た彼女は目を白黒させながら、膨らみを凝視している。
「うわ……これ何か入っているんですか……?」
 勃起という現象を知らないのか、不思議そうに問いかける。
「おちん×んだよ、気持ちよくなると硬くなるんだ」
「気持ちよくなると……硬くなる」
 ズボンの上から自分で触り、説明してみせる。彼女はなんだか、覚えがあるように頷いていた。

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