結花ちゃんは視線を合わせないように下を向いた。
初々しく照れるその姿は羞恥とは違い、少女が女性に変わる思春期の恥じらいを感じさせるものだった。
そして、彼女が踏み出した一歩は俺が差し出したのだ。
俯く彼女が段々愛おしくなってきて、顔に手を添えて、再び唇を奪う。
「ん……んむ……」
二回目の接吻。さっきよりもリラックスしていた結花ちゃんは口の力を緩めている。
弛緩した唇はぷるぷるとして柔らかく、ぷにぷにとした感触がして何度も舌で転がして楽しんだ。
「んん……ちゅ、ぢゅる、ちゅぱ」
夢中になって唇を啄んでいると、彼女は俺の方に手を伸ばし、服の袖をつまむように掴んだ。
「……ん、はぁ……」
「結花ちゃん。口、開けてみて」
少しだけ口を離してから彼女に囁く。
「え……」
あまりよく理解出来ていなさそうな結花ちゃんは、惚けた表情で息を吐き出すように声を出した。
昂奮しているせいか、グロスを塗ったように艶々と光る唇から漏れる息は熱くなっている。
「あーんってしてみて」
「――あーん」
わかりやすく言い直してあげると、結花ちゃんはゆっくりと眼を閉じて、控えめに口を広げた。
不安か昂奮か、呼吸を荒くした彼女はどうしたらいいのかわからないまま、舌を不随意に動いている。
俺は舌を伸ばして、不安そうな舌先を目掛けて口内に侵入させた。
「んっ! んぁ、ふぁ……」
舌同士が触れて、体を跳ねさせる結花ちゃん。
さっき飲んでいたドリンクのせいか、口の中には甘い味があった。まるで甘味を味わっているように舌先が痺れ、仕事で疲れた脳が癒されるようだった。
「ん、んぁ……れろぉ、ぢゅ、ぢゅぱっ、」
夢中になって口内を貪り、部屋に水音が鳴り響けば、次第に結花ちゃんの舌も真似るようにして動き始めた。
少しだけ舌を離すと、獲物を捕食するように彼女の舌が追いかけてくる。
薄目を開けると、彼女は柳眉をひそめて舌の感覚に集中している。
目尻は朱に染まり、少し涙を貯める表情は立派に女性の顔をしていた。
「んぁ……むちゅ、ちゅぱ……えろぉ……」
気が付けば、彼女は教えられるでもなく俺の舌を扱き上げ、隅々まで舐めまわしてきていた。
どうやら彼女はキスがお気に召したようだ。
貪るように動かす舌を感じて、そう思った。
顔を離すと、まだまだ足りない様子だった彼女の舌は、獲物を探して中空で動き回っている。
手応えのなさを不思議に思ったのか、薄く目を開けた彼女と目が合うと、動かしていた舌を止めて、ハッと我に返ったようだった。
「大人のキスは気持ち良かったかな?」
わざとらしく聞いてみると、我に返った結花ちゃんは慌てて舌を引っ込めて口を閉じる。そして大きく頷いて返した。
「気持ち良かった……です」
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